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実態は?未成年の喫煙状況を探る

未成年者喫煙禁止法という法律で罰金の最高額が50万円になっています。吸い始める年齢が若いほどニコチンへの依存度が高い人が多くなるという報告もあり、身体への悪影響が指摘されています。しかし「好奇心」や「何となく」吸ってしまう未成年者が減ることがありません

初めての喫煙経験
初めての喫煙経験については、男女とも高校1年までは小学校4年以前と回答した者の割合が最も高いことがわかりました。
これを数字で表すと、中学1年男子の場合、喫煙経験者2254人中805人が小学校4年以前に初めて喫煙しているということになります。高校1年男子の場合、調査対象の1万2079人のうち喫煙経験者6632人中1115人が小学校4年以前に初めて喫煙しているというデータがあります。



中学生・高校生に蔓延
制服を着た中学生、高校生が駅のホームで、また街を歩きながらタバコを吸っている姿を見かけます。最近は隠れて吸うというよりむしろ堂々と吸っていて、周囲の大人も怖くて見て見ぬふりをしていることもあります。家庭でも子どもの部屋に吸い殻の入った灰皿があって驚いたお母さんもいるのではないでしょうか。
日本には1900年に制定され、すでに100年以上たつ未成年者喫煙禁止法があります。

これは未成年者の健康を考え、未成年者はタバコを吸ってはいけない、未成年者にタバコを売ってもいけない法律です。

しかし実際には子どもたちにタバコはどんどん売られています。制服を着た中学生、高校生がタバコ屋さんからタバコを買うという実験がありました。38軒のタバコ屋のうち、2軒が「自動販売機で買ってくれ」といい、わずか1軒だけが断わり、ほかはすべて黙って即売ったそうです。だれが吸うのかを確認することもなく。未成年者に売ってはけないという法律がある以上、対面販売はもちろん、自動販売機の設置もできないはずですが。

未成年者喫煙禁止法では子どもたちをタバコから守るために、親の責任についても触れています。子どもが喫煙していて親が制止しなければ、親も罰せられます。しかし現実はどうでしょうか。親や世間が未成年者の喫煙をむしろ黙認しているような社会になっていませんか。

平成16年度「未成年者の喫煙および飲酒行動に関する全国調査報告書」(国立保健医療科学院)によると「親にタバコを勧められたことがある」は、男女ともに2~4%でした。

まず、国立公衆衛生院疫学部長の蓑輪眞澄氏らによる「末成年者の喫煙行動に関する全国調査」(96年度)は最近の子どもたちの恐るべき喫煙実態を明らかにしています。調査対象人数は回答のあった中学校80校、高校73校、合計11万581通という大規模調査を実施しました。

この調査によると、中学1年男子で喫煙経験者率29.9%という高率です。さらに学年が上がるに従ってどんどん上昇し、中学3年で38.7%、高校2年で52.6%、高校3年で55.6%に達しているのです。

女子の場合は、中学1年で喫煙経験者率16.7%、中学3年で22.7%、高校2年で33.6%、高校3年で38.5%に達しています。

このうち、毎日喫煙者は中学3年男子で4.6%、高校3年で25.4%にものぼり、4人に1人は既にタバコ依存症といってもよい数字には驚きです。

女子の場合の毎日喫煙者は中学3年で1%、高校3年で7.1%となっています。どちらにしても年齢が上がっていくにつれて喫煙者が周りに伝染していることは間違いありません。どこかで食い止めないと、根本的な喫煙者は減ることがないでしょう。

タバコは「大人の嗜好品」であり、喫煙するかしないかは、喫煙の心身に及ぼす影響や喫煙の活用方法などを十分理解した上で、大人各人が自由意志に基づいて判断するものです。未成年者は心身の発達過程にあり、それぞれの性格や生活様式が未確立であり、また判断力も十分ではありません。従って、未成年者の喫煙は厳に慎まなければならないことは言うまでもありません。

これは、法律で禁止されているからという理由だけではなく、そもそも大人と子どものケジメをつけるということなのです。
私たち人間は、社会生活を余儀なくされた存在であり、善と悪を併せ持つ生き物です。

この場合、「悪」とは肉体の欲望のままに振舞うこと、それは自己中心の動物性そのものを意味します。「善」とは心の声.霊性のことであり、より高い心を持とうという心性です。社会には多様な値がありますが、人間とは、そのいろいろな価値を自分なりにつまみ食いしながら、バランスをとつて社会生活を送っています。

自然界の生き物であり、かつ、精神生活を行う生き物である私たち人間にとって、「よく生きる」とは悪を全部排除していくことではありません。「悪」を全部排除することはそもそも不可能であり、さまざまな可能性の中で、自分の中の毒と何とか折り合いをつけることによって、人生に微妙な陰影や濃淡をつけることが、「よく生きる」ということにほかなりません。

このことを十分理解しているのが「大人」であり、大人と子どもの厳然たる差がここにあります。社会が円滑に回転するには、社会生活上大人でなければならないことがあり、大人と子どものケジメをつけることが必要な所以です。

反タバコ論者は、百年以上も前から未成年者に対する喫煙の害を論じていますが、そこには子どもを持ち出すことによってヒューマニズムの感情にひたり、民主主義的感情に連動するというありきたりの心理が見られます。未成年者の喫煙防止はその程度の問題ではなく、大人と子どものケジメをどのようにつけるか、社会のルールをどのように教えるかといった青少年対策の一環として捉えることにその本質があります。

従って、その対策には、子どもをいかに大人に育成するかという観点が不可欠となるのです。青森県深浦町が未成年者対策として屋外タバコ自動販売機の全面撤去の条例を制定し、また、和歌山県では学校施設内での禁煙をしましたが、これらの対応は、目の前にあるものをなくせばいい、未成年者の目に触れないようにすればいいといつた小手先の対応にすぎません。

タバコ販売店は元々地域コミュニティーの核でした。昔は販売店の許可を受けるに当たって人物評価も考慮されたと聞いたことがありますが、地域コミュニティーの核という立場から青少年対策に取り組む社会的責任を担うことが求められています。もちろん、タバコ販売店のみではありません。酒屋さんも、コンビニにも、青少年にかかわる関係者の連携によって、地域コミュニティーの確立が求められている時代になっているのではないでしょうか。


未成年喫煙の健康影響
では、未成年の喫煙が大人の喫煙よりもさらに医学的に問題が多いことを述べていきましょう。
未成年から吸い始めると、短い喫煙歴にもかかわらず将来常習喫煙者になりやすく、禁煙しにくく、ヘビースモーカーになりやすいことがわかっています。16歳未満で吸い始めた人は20歳以上で吸い始めた人よりも禁煙しにくいという報告もあります。ニコチン依存度の強い人は未成年から吸い始めた人に多くなっています。

成長期に喫煙すると咳や痰、運動時の息切れが出やすくなります。また喫煙によって感染に対する免疫力が低下するので、かぜをひきやすく咽頭炎にもなりやすくなります。血管の変化も若いうちから表われ始めます。動脈硬化につながるため循環器疾患になりやすいのです。

40歳以上の日本人男性30万人以上を長期間にわたって調査した結果、20歳未満で喫煙を開始した人の肺ガンのリスクは、吸わない人の6倍近くになることがわかりました。そしてこれは肺以外のガンも、またガン以外の病気についてもリスクが高くなることがわかりました。

喫煙開始年齢が低いほどタバコの害は大きくなります。そして習慣化しやすく、依存が強く禁煙が困難なことから、未成年者がタバコを吸えない環境作りに取り組むことが重要な課題として社会に課せられています。

正しい知識を与えることで、本人にタバコを吸わないことを選択させられればよいのですが、思春期の子供にとって、病気は遠い出来事で、健康への害を説いてもさほど効果は上がりません。

思春期に喫煙を始めやすいのは、自分のアイデンティティを求め、仲間内での地位を獲得しようとする時期だからです。小学校から中学校ヘ、あるいは中学校から高校へ進学するたびに最上級生から最下級生となり、子供社会のプレッシャーを強く感じます。対外的に自立して、格好よく見えるものなら何でもやってみようとする時期です。

「大人=タバコ」というイメージがある限り、子供は大人のまねとしてタバコを吸います。今の社会では、タバコが「大人らしさ」の勲章のように子供が思っても不思議ではありません。なかには「大人が吸うのはよくて、子供が吸うのはいけないというのは、人間としての差別である」と感じる子供もいます。

子供であるがために人権を無視・剥奪されていると思ったら、その不平等さに反発し、吸いたくなる気持ちもわかります。子供の喫煙を防ぐには、大人がタバコを吸わないようにするのが第一歩です。

前述の全国調査ではタバコとお酒の関係も調べていました。喫煙状況別に飲酒習慣を見ると、中学、高校とも、男女ともに喫煙習慣と飲酒習慣には相関がありました。若者の依存症のコースとは、最初は「なんとなく」「カッコづけのため」にタバコを吸い始め、「未成年者の喫煙は禁止されています」といいながら流れるテレビのマナー広告のたびに反発して吸い続け、親や友人から酒をすすめられ、酒の席では喫煙も習慣化していきます。

酒に酔うことを知り、さらに刺激を求めて手近にあるシンナーを吸い始め、覚醒剤へと進んでいってしまいます。これらの依存症を予防するには、若いうちからの喫煙をまずおさえなければなりません。タバコはアルコール、シンナー、覚醒剤へと続く依存症の入門編だからです。薬物や万引き、売春などの非行の未成年の女子たちのほとんど(約98%)がすでに喫煙を経験していました。

彼女たちに聞くと、タバコと薬物は同様にやめにくいと思っています。学校の保健体育の時間に教科書を使ってタバコの害について学習することも喫煙防止につながります。子どもたちは仲間意識で吸うので、個別はもとより全員に対しての喫煙防止教育が必要です。利便性を求めるより、子どもたちの将来を考えると、だれでも買えるタバコの自動販売機をまずなくすことも、未成年者の喫煙防止のための大人の責任です。

吸い始めた年齢が若いほど…
タバコを多く吸うほど、また、長期間吸うほどがんになりやすいのはもちろんですが、若いときから吸い始めるほど危険性が高くなります。喫煙指数は「1日あたりに吸った本数×吸った年数」で表され、ブリンクマン指数ともよばれ、喫煙の蓄積的な影響の大きさを表しています。

1日30本を20年間吸った場合には600となりますが、1日20本を30年吸った場合にも同じ600になります。

20歳未満で吸い始めた場合には喫煙指数200未満でも肺がん死亡の相対危険性が4.6となり(タバコを吸わない人に比べて4.6倍も肺がんで死ぬ危険性が高い)、20歳以上で吸い始めた場合の喫煙指数400~600と同じくらいの危険性があります。これは、若いほど肺の細胞が発がん物質の影響を受けやすいからであると考えられます。

喫煙指数が800以上(例えば1日20本×40年以上)の場合には、20歳代までに吸い始めた人では、吸わない人に比べておおよそ7倍程度、肺がんで死ぬ危険性が高くなります。

肺がんのほかに、特に喫煙と関連の強いがんは、喉頭がん、舌・口腔・咽頭がん、食道がん、膀胱がんなどですが、ほぼすべてのがんの危険性を高めます。

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