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タバコをめぐる裁判や争いが世界でも起こっている

日本でもアメリカでも、タバコをめぐる泥沼のような争いが、延々と続いています。なぜか日本ではほとんど報じられなかったのですが、94年に発生し、全米のジャーナリストを震憾させた事件について触れておきたい。
タバコをめぐる泥沼のような争いも世界では起こっている
経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」に、ウォルト・ボグダニッチという敏腕記者がいました。主に医療や社会保障の分野で活躍し、ジャーナリストにとって最高の栄誉とされるピュリッツァー賞に輝いたこともある人物です。 92年、彼は三大テレビ・ネットワークの一角を占めるABC放送に移籍して報道番組で、かねて取材を進めていたタバコの問題を取り上げることになったのです。 ボグダニッチ氏は 「私たちはタバコの製造プロセスに着目しました。最大手のフィリップ・モリスが、中毒性を高めるため葉タバコのニコチンを意図的に抽出・加工し、製品に添加する操作を行なっているという情報を得ていたのです。業界内部の情報源は初めのうち怖がっていましたが、何度も説得して、事実を明らかにするのが正義だと思ってもらえるようになったんです」 取材の成果は94年、「スモーク・スクリーン」のタイトルで放映された。ニコンにアルコールを混ぜる工程までが語られたスクープは、全米で相次いでいたタバコPL訴訟がニコチンの依存性を争点にしはじめたタイミングとあって評判になり、議会で公聴会が開かれる事態となりました。 それだけにフィリップ・モリス側の反応も素早かった。同社は放映の17日後、ABCを相手取りバージニア州リッチモンドの巡回裁判所に提訴。ワシントンからメディア法を専門とする弁護士を招いて、徹底抗戦の構えを見せました。 弁護士はロースクール卒業後の16年間、新聞記者として働いた経験を持っており、ケンタッキー州の地方紙時代にやはりピュリッツァー賞を受けた腕利きで、『ワシントン・ポスト』を経て、目標だった法律の世界に戻ってきたばかりだった。 弁護士としては新米だったが、彼の法廷戦術は凄まじいものでした。アメリカン・エクスプレスやシティバンク、AT&T、ハーツ、コンチネンタル航空などに召喚状を送りつけて、ボグダニッチ氏の通話記録やクレジット・カードの利用履歴、移動履歴等を調査したのです。目的は、ディープ・コフと呼ばれていたABC側の情報源を突き止めることでした。召喚状の発行には裁判所の承認が必要ですが、タバコの製造工場が立地するリッチモンドはフィリップ・モリスの城下町だったので、問題にもされなかったという。 「この国には、ジャーナリストからニュースソースの秘匿という特権を剥奪したいと考えている権力者がたくさんいます。私はあの報道で禁煙ムーブメントの契機をつくることができたと満足していますが、裁判所があのようなやり方を認めたことで、そういう連中に力を与えてしまったのではないかとも思い、心配しています」(ボグダニッチ氏) 裁判は結局、ABCが陪審の和解勧告を受け入れ、フィリップ・モリスに謝罪する形で決着しました。折りしもABCの株式を大量に買いつけ、親会社になろうとしていたウォルト・ディズニー・カンパニーの強い意向が働いたと伝えられています。

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