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タバコ1本で5分寿命が縮まるって本当?日本の平均寿命と喫煙

最近では平均寿命(正確には平均余命)の代わりに「健康寿命」という指標が導入されています。これは、介護などを受けずに自立して生きられるという年数を計算して示すものです。そして、タバコは健康寿命を縮める一番明白な原因であるとされています

予防可能な最大の死の原因
WHOは1998年、「たばこのない社会への行動宣言」を発表しました。そこでは「シガレットは通常の使用によって人を殺す、唯一の合法的に入手可能な消費物資である」と述べられていますが、翌99年の「世界健康報告」において、とくに「たばこという流行病との戦い」という一章を設け、次のように糾弾しました。

現在の喫煙パターンが続けば、生存する人のうち5億人がたばこが原因で死ぬ。 ◎世界中でたばこが原因で死ぬ人は1998年には年間400万人であったが、2030年には1000万人になるであろう。別の言い方をすれば、21世紀の最初の4半世紀にたばこが原因で1億5000万人が、第2.4半世紀には3億人が死ぬということである。

◎これらの死亡の半数は労働力のある中年の35~69歳の人たちに起き、寿命を20~25年縮める。
◎1950年代からの7万以上の研究が、継続喫煙は早期死亡や疾病の重大な原因となることを科学的に疑いなく示している。 さらに、WHOは2003年、初の「世界がん報告」を発表しました。

2000年の死者5600万人のうち620万人(12%)ががんで亡くなり、最も多かった肺がんは110万人だったことを報告していますが、同時にがんの最大の原因は喫煙で、喫煙者は非喫煙者に比べて肺がんにかかる率が20~30倍になり、男女とも喫煙者率の高い国では肺がんの90%はたばこに起因し、また受動喫煙によって肺がんのリスクは20%高まるなどと述べ、報告書の「キー・ステートメント」のトップに「たばこは予防可能な主たるがんの原因」という項目を掲げました。

アメリカでは1964年以来、定期的に公衆衛生総監の諮問によって「喫煙の健康影響に関する報告書」が出されていますが、40周年にあたる2004年の報告書は、アメリカでは1964年以来、1200万人以上が喫煙のために亡くなり、さらに現在生存しているアメリカ人のうち、2500万人が喫煙関連の病気で死ぬおそれがあると述べています。

そして、アメリカでは喫煙のために毎年44万人が早すぎる死を迎え、喫煙者は寿命を13~14年縮めているとし、「喫煙は予防可能な死亡と疾病の主要な原因であり、多くの命と多くのお金と、そしてあまりに多くの涙といささかの感傷をまじえて述べています。 わが国では厚生労働省(以下、厚労省)が「健康日本21」で喫煙者率の低減を大きな目標に掲げ、「健康増進法」が制定されて受動喫煙の防止が義務づけられました。

毎年5月31日に開催される「世界禁煙デー」における厚労相のメッセージでは、「たばこを吸わないことが一般的な社会習慣となるよう」というのが例年の枕詞になっています。また政府は、2003年のWHOの総会で採択された「たばこ規制枠組条約」も早々と批准しました。

そして、厚労省は喫煙を「ニコチン依存症」という病気として認め、06年から一定の要件のもとに禁煙治療を健康保険の対象とすることを決定しました。このように、今や多くの国と健康にかかわる公的機関が予防可能な最大の死の原因である喫煙習慣の廃絶に取り組もうとしています。

喫煙が寿命を縮める?
平均寿命の問題について少し付け加えておきたいと思います。
第二次世界大戦以降、先進国の平均寿命は著しく延び、どの国でも男性では75歳前後、女性では80歳前後にまでなっています。日本人の平均寿命は世界一でさらにそこから五歳前後上回っています。最近では平均寿命(正確には平均余命)の代わりに「健康寿命」という指標が導入されています。これは、介護などを受けずに自立して生きられるという年数を計算して示すものです。そして、タバコは健康寿命を縮める一番明白な原因であるなどとされています。もちろん、この健康寿命においても、日本は世界一です。

ところで、平均寿命とは各年齢の死亡率から割り出された人口統計学上の数値であって、結果として本当の平均存命年数と一致するとは限りません。また、そこまで生きることを期待したり、それが当然の権利であると思ったりできるような数字でもありません。

この計算方法を発明したのは、コンピュータの原理を先取りした差分機関を構想したイギリスの発明家チャールズ。バベッジだそうです。また、平均寿命は「○歳児の平均余命」として算出されるため、たとえば40歳の男性がその年に発表された平均寿命まで生きられると思うのは間違っています。発展途上国の平均寿命が短いのは新生児の死亡率が高いからなのであり、大人がみんな40歳代で死ぬわけではないのもそのためです。

ところが、そもそも計算上求められた数値にすぎないのに、私たちはその「平均寿命」まで生きられなければ「若死に」、「早死に」であり、何か損をしているかのように思いがちになっているのではないでしょうか。たとえば、ある調査によれば、一群の喫煙者の集団の方が非喫煙者の集団よりも平均寿命が短い。それを元にして計算をすると、タバコ一本あたり五分間寿命が縮まるなどという珍妙な結果が得られるのです。また、「40歳の喫煙男性は、寿命が3.5年縮まる」などという報道もありました(2007年5月9日付『読売新聞』)。だが、言うまでもなくこのような数字が何かを証明していることになどなりません。

タバコを一本我慢するたびにその人の寿命が本当に延びるはずがないからです。
誰にでも分かることですが、あなたがいつ死ぬかということと平均寿命には何の因果関係もないのです。平均寿命がいくら延びたところで若死にする人はそれとは関係なく若死にするのであり、その反対に喫煙者でも90歳、100歳、あるいはそれ以上の年齢まで元気な人はいくらでもいるのです。もしかすると、明日にでも交通事故で死んでしまうこともあれば、身体が弱くて病気がちの人が意外なほど長生きをすることもある。

タバコによって全くダメージが与えられていない強靭な肉体を持っている高齢の喫煙者が何ら健康状態に問題がないというような例は、個別にはいくらでも存在しています。実際に高齢の喫煙者で計算をした平均寿命は、非喫煙者の同世代よりも長くなるという逆転現象も見られるそうです。また、紙巻きタバコよりも明らかに刺激が強いと思われる、パイプや葉巻のスモーカーたちの健康寿命は非喫煙者と同じかむしろ長いというデータもあるようです。

国民の平均寿命や健康寿命というのはひとつの目安にすぎません。それは医療体制や生活環境の整備とも密接に関わっている目安であり、その意味で平均寿命や健康寿命が長いというのは大切なことですし、それを今後も維持したり、延ばしたりしていくように社会や行政が努力するということも大切なことです。

しかし、寿命というのは、基本的には人それぞれです。言うまでもなく、長く生きられればそれでいいというものではありません。問題はそれぞれの「生き方」の中にあると言えるでしょう。「天寿」という言葉があるように、人によっては太く短くという生き方だってあってかまわないのだと思います。

それに、どんなに長く生きられても、結局のところ「老化」という過程からは誰も逃れることはできませんし、100歳以上現役のまま若いころと同じように元気で生きられる人なんてどこにもいないのです。「生き甲斐」は人によって全く違っているのですから、私は個人的には好きなものを我慢したり、やりたいことをやりきれないまま、ただ単に長生きしたりするような生き方はしたくありません。一人ひとりの生き方に関わるそんなことに、国や医学団体が口を出すことはないと思いますし、そんな退屈な長生きばかり推奨するような健康増進法などというものは、全く余計なお世話なのではないかと思っています。
禁煙a8
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