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タバコのパッケージデザインは実は有名なデザイナーが描いていた

タバコのパッケージは何かと問題になることも多いのですが、パッケージデザインはとてもセンスがあるものが多いと思います。カッコよさを助長問題もありますが、いまのところタバコのデザインやネーミングの自由はなんとか保たれています。

昔はパッケージクラフトという本がありタイトルのとおり、ソフトケースのタバコ空箱を使った、クラフト制作の本である。

タバコの空箱でカラフルな小物入れを作ったりするものである。いまではありえないことだろう。調べてみたところ、やはり関連本はすべて絶版になっていた。

タバコのパッケージデザインが優れたデザインの宝庫だということは、愛煙家でなくても感じることではないだろうか。
そもそも、日本で「デザイン」という言葉が一般的に使われるようになったのは、「ピース」が発端だといわれている。デザインは、それまで意匠、図案と呼ばれていた。

「ピース」は1946年、平和日本を記念して発売されたタバコである。発売当初は濃紺に唐草模様の入ったデザインで、当時から人気は高かった。

だが、そのデザインがドイツのデザイナー・ホルワインが作ったパッケージ試作品と酷似していることが指摘され、平和条約締結の1952年に改装することになる。そこで改装デザインを依頼されたのが、20世紀デザインのパイオニアと呼ばれるレイモンド・ローウイだ(ラッキーストライクも彼のデザインである)。そしてローウイが提案した9つのアイディアのなかから、現在の鳩がオリーブをくわえているデザインが「平和にふさわしい」として選ばれた。

また、そのデザイン料金は150万円。内閣総理大臣の月収が11万円、サラリーマンの平均月収が1万円未満の時代である。このたいへんな価格は、現在までもデザイン史の語り草になっている。

この改装によって、ピースの販売総数は2年で5倍以上に増えたという。それから、「デザイン」という言葉が一般化し、「デザインの広告的な価値」が一気に広まったのだ。ちなみに、世界的水準という言葉が普及したのもピースの改装による。

ほかにもタバコのパッケージデザインは、数々の著名なデザイナーが手がけている。たとえば、ハイライトのデザインはイラストレーターであり映画監督でもある和田誠氏、フランスタバコの代名詞「ジタン」は、多くの企業ロゴなどを手がけているデザイナー松永真氏によるものだ。
それらの優れたデザインを台無しにしている警告文は本当にとんでもない。 もっとも慣れてきたせいか、現在のデザイナーの工夫の勝利か、当初よりもだいぶ落ち着いてきた気もするが。

よく世界の警告文はもっとすごい、とただれた顔の写真や真っ黒な肺の写真がのったパッケージの画像を見る。これも初めて見たときブラック・ジョークかと思ったがジョークではなかったようだ。

タバコならまだしも、これがもしアルコールだったら、クルマだったらと考えるとすごいことになる。ビールの缶ラベルに、固まった肝臓の写真。ワインのラベルにはもがき苦しむアルコール依存症者の顔。自動車のボンネットに事故現場…ファンキーにもほどがある。

警告文に記載された「疫学的統計による試算」の非絶対性はすでに述べたけれど、だいたい喫煙者は、健康に悪いことくらい覚悟の上で吸っている。「わかってないから若者の喫煙が増えるんだ!」という意見もあるが、はっきりいって誰に何をいわれても、吸う奴は吸う。むしろそんなパンクなデザインになったら、 一部のイケナイ青少年をかえって喜ばせてしまうのではないか。

さらに「喫煙者はタバコをファッションだと思っている。タバコはダサいというイメージを強くすれば、吸わなくなるのでは」というひとがいて、驚いたことがある。「いじめ、かっこわるい」と同じ理屈なのだろうか。私は「いじめ、かっこわるい」にも同じ印象を抱いたことがあるのだが、逆に、「あなたはもしかして、そんなに嫌いなタバコをかっこいいと思ったことがあるの?」といぶかしんでしまう。

おそらく現代のほとんどの喫煙者は、自分がタバコを吸う姿をかっこいいなんて思っていないと思う。似た気持ちがあるとしたら、タバコを愛した偉大な諸先輩方や、文化、歴史に対しての敬意だろうか。対外的にかっこわるくてもださくても、自分にとってなんらか必要な理由があるから吸うだけだ。

つまり警告文になんらか効果があるとしたら、じつはタバコを憎む人たちが自己満足するためのものなのではないかと思うのだ。嘆かわしい。
だいたい、もしパッケージがグロくなったとしてもタバコケースに入れてしまえば見えなくなる。各銘柄の個性を楽しんでいるものとしては、そんな日はこないでほしい。

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