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不完全な換気によって被害を受けるシックビルディング症候群とは

現在、文明国におけるすべての建物の約50%が、不完全な換気によって被害を受けていると見なされており、室内空気によるところの複合した多くの健康問題はシックビルディング症候群と呼ばれるようになってきました。
シックハウス症候群ならぬシックビルディング症候群とは
喫煙と疾病との因果関係を証明するために観察される人々は、 その病状を進展させるような他の要因に影響されて問題を混乱させてはならない。とすれば、タバコの煙に何年も曝露されることを条件とする喫煙と疾病に関する状況の設定は現実的に不可能である。現代の環境問題に関する意識の高揚とともに、現代人が1日の大部分を過ごす室内の空気に関する重要性の理解も増加してきた。

このことから室内空気の分析や評価に対して、また、私たちの福祉と健康を意味するものを見つけ出すことに対して、大きな関心が生じてくる。下水溝や汚染された飲料水、そして害虫からのリスクについての理解は、いまや換気、新建材および輸送手段にまで広がってきている。

1970年代の石油危機以前でさえ、誰もがエネルギーの節約に熱心だった。これは公共の建物やマンションにおける、ときにはフィルターを通さない空気の循環が議論の中心課題であったので、室内の汚染は蓄積され、深刻な悪化を生み出すことになった。このような(省エネルギー空気循環)対策は健康への影響について衛生学者たちの関心を集めた。ごく最近では、この領域における研究から得られた結果を専門家たちが交換する大きな国際会議さえいくつか開かれている。

アメリカとスカンジナビア諸国はその草分けであるが、徐々に世界中でこの問題が現実のものとなっている。今日、文明国におけるすべての建物の約50%が、不完全な換気によって被害を受けていると見なされており、室内空気によるところの複合した多くの健康問題はシックビルディング症候群と呼ばれるようになってきた。

室内の空気は、その中で長い時間を過ごす人々により、意識的に福祉の減退や不健康の原因と見なされており、研究者たちは、職場において長期欠勤や病気退職によるコストが、雇用者にとっては適切な換気をおこなうためのコストの10倍もの費用がかかるということを明らかにしようと試みてきた。

専門家たちは、シックビルディング内のオフィスやその他の職場で働く被雇用者に生産性の低下と欠勤率の増加が見られると推定している。質問を受けた被雇用者の20ないし30%は、その大部分が不十分な換気や不良な濾過作用からくる室内空気の質的低下によるシックビルディング症候群の影響を感じとっている。

近年もっとも頻繁に検討されている要因は、ラドンと環境中のタバコ煙、壁や床のカバーから出る揮発性有機物質および無機物質(コンクリートの結露)、プリンターその他の電気機器からのオゾンである。

注目されているその他の要因には、静電気ならびに蛍光灯、ネオンサイン、暖房器具、電子器具(コンピ ューター)からの放射、騒音や振動、温度と湿度などがある。さらには、空気中、 とくに空気が循環する場所にみられる細菌、カビ、カビの胞子に対しての関心が増えている。

しかし、外気、 さらに車道や道路脇、駐車場、地下室、また工場の影響を考えることも重要である。中に入ってくる新鮮な空気は、けっして外の環境の空気よりも新鮮であることはない。優れた換気システムは、室内の温度を20℃から23℃の間に、湿度を30%から60%の間に維持できることが基準と考えられている。

シックビルディングは、長時間を建物のなかで過ごす多くの人々の間に、一連のもやもやとした、しかし明らかに気のつく徴候を引き起こす。その徴候は、けっして単一の要因によるものではなく、いくつかの複合した要因にもとづくものであり、人によってさまざまに異なった重みが与えられるもの、すなわち、それらは主観的かつ個人的で、そのうえ測定不能なものである。

これらの徴候は、不快、息苦しさ、目・鼻・咽頭・皮膚の炎症・粘膜の乾き・喉の荒れ・せき・頭痛・眠気・そして吐き気といった現象である。シックビルディング症候群の診断は、問題とされている建物から離れたとき、それらの徴候が消えるということによって証明される。その犠牲者たちは、自分たちの余暇や週末には生き生きとして元気でいるから、建物の環境を維持する責任者たちの目には、心気症、怠慢、仕事嫌いと映り、当然、やる気を疑われることになる。

責任者は、問題はすべて勤労意欲の欠如からくる、という。だから、それぞれの要因をいかに測定するかという問題の解決が非常に重要となってくる。もし、このことがなければ、私たちは、ポンテイアック熱や在郷軍人病(レジオネラ菌感染症)やアレルギー性鼻炎など、健康への重大な影響をもたらす症状を扱わなければならない。これから私たちは、室内空気汚染の要因の中でも最もよく研究されてきたもののいくつかを取り上げることになるだろう。これらは必ずしもすべての要因の中で最も重要なものとして、今後ともずっと扱われていくとは限らない。

この領域においては、さらにまだまだ多くの研究が今後ともなされることになるだろう。明らかに知識が欠けているのだから。潜在的な化学要因のなかには、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化窒素、二酸化硫黄、揮発性有機物質、鉱物性繊維、そしてラドン(建物に浸透し、そこに蓄積する放射性ガスで、永久的にアルファ線を放射する)等がある。これらの物質の多くは健康に影響を及ぼす。 環境中のタバコ煙(ETS)は、つまり室内空気の汚染に対するタバコの寄与であるが、見たり嗅いだりすることのできる唯―の要因であり、それゆえに最も重要な汚染の源泉であると言われてきた。

何はともあれ、換気効率を示す優れた指標であると考えられてきたのである。しかし実際には、オフィスで働く人々を対象に測定されてきたニコチンの濃度(そして、タバコに対する唯一の特異的なトレーサーであるコチニン)は、検出するための最低の限界に近いほど低レベルのものにすぎなかった。

1989年2月のブリュッセル会議で強調されたように、喫煙区域からの空気が循環されている非喫煙区域と、新鮮な空気が供給されている非喫煙区域との間に、タバコ煙の浮遊粒子状物質、一酸化炭素、二酸化炭素の濃度に関してまったく差のないことが明らかにされている。ETSによる生物学的影響の測定はけっしてうまく定義されておらず、精度も極めてよくない。ETSと肺がんとの疫学的 関連は証明されていないが、このことは、次のような理由から まったく驚くに当らない。

すなわち、その量は極めて少なく、 その計算は主観的で、いま喫煙反対を唱えている人々の態度を裏づけるような立証不可能な傾向(ブリュッセル会議)と同様、他の不明な寄与要因によって大きく支配されているからである。ラドンの健康へ及ぼす影響は議論の真っ最中であり、これもまた大きな意見の不一致をつくりだしている。

動物実験では、ラドンの放射線と肺がんとの関係が示されており、ウラン鉱山の労働者もまた、より高いラドンの曝露によって、肺がん増加の危険性を示している。これらの経験をいかにシックビルディングの問題に置き換えるかについては多くの論争があるが、建物の中のラドンの存在は、換気の問題よりもおそらく地理的 位置のためだという意見がけっして少なくないのである。

100以上の揮発性有機物質が室内の空気中から発見されてきた。ホルムアルデヒドと塩化メテレンは正確にその有無を決定できるが、建築材料、家具の接着剤、洗剤、殺虫剤、塗料や溶剤からの寄与は、著しく複合していることが多い。その中には、よく知られている発がん物質が含まれている可能性がある。

これらの揮発性有機物質の濃度は(ある環境下では)、外気より80倍も高いと測定されてきた。たとえば、 PVC(塩化ビニール) 物質は、製造後も長い間にわたって生理学的影響をもつフェノール酸と他の有機物質をかなり大量に放出する。しかしながら、そのばらつきは非常に大きなものなので、一般化すること は難しい。 それほど揮発性の高くない有機物質もまた、建築資材から放出され、織物やプラスチツク・コーティング、 とくに綿織物に蓄積する。カクテル・ドレスヘ付着するのは、 アスベストやミネラル・ウールのような無機的物質である。

しかし、接着剤、塗料、希釈剤、洗剤などの新しい物質の開発には、技術者と生産者との間により高度な協力が求められている。 これもまた繰り返すが、ほとんど何もわかっていない。しかし、 多くの物質によって健康が影響されることは確かである。多くの異なる物質のいくつかは健康に対するリスクを増加させるが、 一方、他の多くについては何も知られていない。一酸化炭素はおそらく室内汚染の最も有力な因子である。これに寄与するものはヒーター、ストーブ、暖炉、屋外の車の交 通であり、 ビルの地下駐車場も忘れてはならない。控えめながら人間もそれに寄与している。

モダンな建物は、高度に隔離されていて、空気抜けも窓を開ける設備(それが自動調温装置の 妨げになるから)もないまま循環換気装置を用いており、 とくに一酸化炭素問題を起こしやすい。また命にかかわるような急性一酸化炭素中毒は、ストーブから煤だらけのパイプや煙突を通じて不完全な送風をしている古い建物でも起こるのである。

生物学的な汚染は、圧倒的に人間によって引き起こされる。 それぞれの人が、服から埃を出すのと同様、熱、湿気、臭気、 汗、垢、ふけ、そして髪の毛をまき散らす。他の有機物、すなわち、一般には、カビ、細菌、ダニ類もこれに寄与する。多くの人々が、これらが実際にシックビルディング症候群を起こしていると考えている。

物質のレベルでいえば、すべての汚染された建物のうち、34%がカビやカビの胞子によって汚染され、 9%が細菌によって汚染され、そしてたった4%にしかETSによる影響は見られない。逆説的にいえば、汚染された換気パイプとフィルターがしばしば細菌やカビの汚染源となる(もちろん、これにはETSは含まれていない)ので、換気の増加は汚染防止に役立っていない。カビも細菌と同じように、しばしば伝染病の発生源となり、 汚染された建物の中で働く従業員の間に、不愉快な伝染病を引き起こしてきた。室内のちり(ハウスダスト)の中のダニは 根絶し難いと思われている。ダニは、カーペットや床のカバーの中で繁殖しながら、多くの住居にはびこり、工業化された社会のどこにでも見られる大きな問題となっていると考えられる。

ハウスダストのせいにされるすべてのアレルギー性疾患の場合、99%がダニの排泄物によるものであり、アレルギー性が証明されている。ハウスダスト中のダニは、クッションの中や枕、羽毛布団、毛布、衣服、カーテン、そして建物のひびの中など、あらゆる場所に住んでいる。この問題と闘うためには、 安息香酸ベンジルやDDTで掃除することが奨励されている。

しかし、それらはシックビルディング症候群や室内環境の悪化を明らかに助長させるかも知れないし、おそらく、がんにかかるリスクを増加させることもありうるだろう。が、そのようなことは誰にもわからない。しかし、以上のことを全部忘れて、すべての努力を嫌煙運動に集中させた方がずっと楽である。もちろん善良な人々や関係 官庁にその重要性を信じ込ませることができればの話ではある 。

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